
あなたは出る杭は打たれると思うでしょうか?
または、出る杭として打たれた経験があるでしょうか?
日本人は没個性で横並びだと言われます。他人と違うことをすると頭を抑えられて、出る杭として打たれてしまいます。こうした場合、大人しく、他人と同調していれば打たれることはありません。
一方で、何かに秀でた成果を出す人は、横並びを脱して、独自性を発揮しています。要は、打たれなかった杭になったのです。
出る杭になるべきか、ならないべきか。この記事では出る杭について考えてみます。
出る杭の杭とは、何か?
言葉について考える時は、言葉を理解することが第一歩です。というのは、やはり言葉に理解のヒントがあるからです。
まず、杭とは何か?ということですが、杭というのは建築物の固定や目印のために地中に打ち込む棒状のものを言います。杭とは、建築物の構造上、大切なもので、打たなければ地中に入りません。で、杭を打つ理由は、建築物の耐久性の強化です。ですから、建築業界には杭を打つ仕事があるのです。
杭打ちは、地盤の弱い地域で行われ、地盤がしっかりとしている場所では杭を打つ必要がありません。
この点を組織に例えると、杭とは基本的な仕事とでも言えるでしょうか。たとえば、一人が全部の業務をこなし、稼ぐ人ばかりの組織があるとしたら、それぞれが自由に動いてもよい結果が出るでしょう。こうした組織には、杭は必要ないかもしれません。ただし、全部を一人でできる人は組織に属する必要がないので、独立してしまい、組織そのものが成立しない可能性があります。
一方で、組織力で成果を出そうと思うなら、それぞれが自分の役割を担う必要があります。たとえ地味でも基本的な仕事をほったらかして、勝手なことをやるわけにはいきません。
杭とは、会社に割り当てられた仕事のことを言います。ですから、会社員というのは全員が杭なわけです。
そもそも、杭とは出てはいけないものです。
出る杭は打たれるとはどういう意味か?
ところで、出る杭は打たれるというのはどういう意味でしょうか?
辞書的な意味は、
1 才能・手腕があってぬきんでている人は、とかく人から憎まれる。
2 さし出たことをする者は、人から非難され、制裁を受ける。
ということです。
才能がある人が人から憎まれるかというと、そんなことはありません。ほとんどの場合、称賛されます。憎まれる場合は、高飛車で横柄な態度を取った場合やスキャンダルを起こした場合でしょう。
才能に溢れた人は謙虚に生きている限り、憎まれることはありません。
一方で、大した成果を上げていないのに、人や組織を批判する人は、非難されて然るべきでしょう。組織において足並みを乱す人の存在は問題になります。
打たれる杭には、打たれる理由があるのです。
なぜ、出る杭を打つのか?
人はなぜ出る杭を打つのでしょうか?
結論から言えば、杭が出られたら基礎が疎かになるので、基礎を固めるために杭を打ち付けて安定させる必要があるからです。
建築物には、基礎があり、その上に上物が建築されます。どのような建築にするのかを決定するのは、建築の責任者です。多くの場合は、施主や設計者や建築家になります。
手順としては、全体の設計がなされて、基礎や建築物のパーツの担当者に仕事が割り振られて、建築物が作られます。この時、基礎の担当者が、「こんな建築はダメだ」と言うと、仕事がすすみません。こうした人がいれば、頭を抑えるしかありません。
組織には必ずリーダーがいます。リーダーは組織の目的や進む方向を決定します。その際に、組織の目的や方向性に異を唱えるメンバーの話を聞くわけにはいきません。
打たれる杭というのは、組織のリーダーにとって都合が悪い存在なのです。
出る杭が打たれる理由は、
1:杭としての機能をしていない
2:リーダーの意に沿わない意見を言う
ということです。要は差し出た存在であるということです。
自己主張をするべきか、しないべきか
アメリカ人は自己主張が強いと言われます。多民族国家なので、阿吽の呼吸が通らないということが理由でしょう。ローコンテキストの国では、はっきりと話をしないと理解されません。アメリカの影響を受けている日本では、自己主張の重要性を解かれることは理解できます。
一方で、日本はグローバル化の中でも、単一民族的な傾向が強いと言えます。つまりは、余計なことは言わない方が身のためであると言える文化なのです。グローバルな視点で見れば時代遅れという批判を受けるかもしれませんが、日本の多くのビジネスマンはグローバルな仕事をしているわけでありません。
将来的なことはさておき、今現在は、自己主張は場合によると言えます。
出る杭になっていい時
出る杭は打たれるのが当然ではありますが、地中に埋まったままでは、活躍の機会もなくなります。
組織で活躍をしようと思うなら、杭の仕事をしながら、頭を出さなければならない時もあります。
では、どんな時に、頭を出してもいいのでしょうか?
1:組織の方向に合う提案
2:組織をより良くする提案
たとえば、社内システムが遅れている中小企業で、最新のシステムを導入するべきだという提案は、よくも悪くもあります。提案自体は正しくても、導入の資金が足りない場合は、経営者の頭を悩ませます。経営者自身も必要性を理解していても、導入することができない場合、正しい提案は余計な話になります。
優秀な人であれば、資金を確保する方法とできるだけ安価に導入する方法、そして自分が導入の責任者になることを提案するでしょう。
こうした場合は、歓迎される出る杭になります。
偉人も出る杭を推奨しているけれど。
出る杭に関して、偉人の格言を紹介します。
松下幸之助
「出すぎた杭は打たれない」
吉越浩一郎
「出ない杭は土の中で腐る」
名言ではありますが、鵜呑みにしてはいけません。
出る杭とは、組織のリーダーの意向に沿う提案をすることであり、かつリーダーが思いつかないレベルのものであれば、採用されるという話です。出過ぎたというのは、出過ぎた真似をするんでなく、とてつもなく優秀であるという意味です。
確かに、打たれるから意見を言わないという姿勢では、工夫をする習慣がなくなります。しかし、会社によってはイエスマンが出世することもあります。このような会社の場合は、地中深く沈み、組織を支える杭になることも有効です。
どうしても、組織の中で意見を言いたい時は、打たれることを覚悟しつつ、自分で組織を作る気概が必要でしょう。
注意:悪しき組織に立ち向かうためには勇気が必要
組織が悪事をおこなっている場合は、隠蔽を迫れることがあります。企業の不祥事である品質偽造や書類の改竄など、告発をした「出る杭」が報復を受けることが少なくありません。悲しいかな、こうした組織は大企業であることも少なくないため、安定性と引き換えに、不正への加担や沈黙を貫かなければならないこともあります。こうした人を批判はしません。
戦うことは正義ですが、正義を貫かなければならないことはないのです。
まとめ
この記事では、出る杭は打たれる理由と出すぎて打たれない杭になる方法について考えました。組織には組織のルールがあります。組織に都合の悪い存在の頭を打つのは当たり前です。一方で、出すぎた杭がない組織は変化ができません。賢い人は、杭の役割を担いつつ、頭を出すという戦略をとります。ぜひ、記事を参考に、組織の中では賢く頭を出してください。