
成功法則は、世の中に多々あるが、ほとんどは法則ではなく、方法論を伝えている。方法は、やり方の上手な人と下手な人によって成果が違う。また、環境により機能しなくなることがある。
しかし、法則は一定の条件のものでは同じ結果が出る。
成功に法則はないものか?
この記事では、仮説をもとに2つの成功法則について紹介したい。
なぜ、どん底の男は成功したのか?
昔々、あるところに男がいた。運に見放されたような男で、何をやってもうまくいかない。朝から晩まで働いても暮らしは豊かにならない。
ある時、男は帰り道にあるお堂に入り、観音様にお願いをした。
「観音様、おらに運はあるだかな?もしあるなら、おらに運を向けてください。」
男がお願いをした観音様は観世音菩薩と言い、世間の人々の救いを求める声を聞くとただちに救済するというありがたい仏様である。
ちなみに、仏様にも階層があり、トップは如来様。次に菩薩様、明王様となる。観音様は如来様の次に偉い仏様なのである。
男は、観音様に願いを話している間に、疲れ果ててお堂の中で眠ってしまう。
夢うつつの男に観音様が言う。
「お前は、お堂を出るなりすっ転ぶ。その時、手にしたものを大切にして西に向かって進みなさい。」
男は観音様の教えを聞いて、お堂を出る。すると、観音様に言った通りに、お堂を出ると観音様にいう通りに転ぶ。その時に手にしていたものは、「わら」だった。
男はわらを手にして西に進む。すると、顔の付近を大きなアブが飛び回り、煩くて仕方がない。そこで男はアブを捕まえると、わらの先に結び付けてやった。
西に向かっていると、母親の背中で大泣きしている子どもがいる。男があやしても一向に泣き止まない。母親も困っている。その時、子どもは男の持っていたわらに結ばれたアブを見て笑い始める。観音様からは、手にしているものを大切にせよと言われている。しかし、男は、子どもが喜ぶならと、わらとアブを母親に差し出す。すると、男の子は泣き止んだ。喜んだ母親は男にミカンを渡した。
男がさらに歩くと、喉の渇きに苦しんでいる商人と娘がいた。娘は、喉が乾いて苦しんでいる。男は、娘に蜜柑をあげる。喉の渇きを癒された娘は、代わりに高価な反物を男に差し出す。
さらに西に向かう旅の途中で男は侍に出会う。その侍は愛馬が急病で倒れてしまっていた。侍は、馬と反物の交換を申し出る。男は、侍の申し出に応じて、馬を手に入れる。馬は弱っていたが、男は水を汲んで馬に飲ませて、一晩中世話をする。馬は元気を取り戻して立ち上がった。男は馬を引いて旅を続けた。
さらに、西に向かうと、大きな屋敷の長者が立派な馬なので、1000両で譲ってくれという。
あまりの大金に男は気絶する。屋敷に運ばれて、布団で寝ていると、娘が現れる。その娘は、男が蜜柑をあげた娘だった。長者は、男に娘の婿になって、自分の跡を継いで欲しいと言う。
こうして、ワラを持って西に向かった男は、億万長者になった。
男は、金持ちになってからもわら一本を大切にせよという観音様の教えを守り、一生懸命に働いた。
ご存知の「わらしべ長者」の話だ。
これに似たような話は世界中にある。その理由は、わらしべ長者のように成功した人物がおり、その話が人の共感を得ることができているからだ。しかも、世界中の多くの場所で。
資本主義社会におけるひとつ目の成功法則(仮説)
資本主義社会において、経済的に豊かになることは成功の要件になる。元々の資産家でない限り、何らかの形でお金を稼がなければならない。要は、仕事をするということになるのだが、仕事での成功には法則があると考えられる。
わらしべ長者が、成功していくプロセスにひとつの法則がある。
成功法則1:人が欲しいものを欲しい条件で提供すれば成功する
まさに、これが資本主義社会における成功法則だろう。
この観点から、企業の業績について検証してみたい。
なぜ、吉野家は赤字ですき家と松屋は黒字なのか?
デフレの代表と言えば、ファーストフードだ。特に牛丼やハンバーガーはその象徴と言える。
しかし、近年、吉野家は赤字に転落し、松屋とすき家は黒字を継続している。
ここで、成功法則に照らしてみたい。
まずは、人が欲しいものを提供できているかという点を考えてみる。ちなみに、ここからの話は基本的には、成功法則の仮説に照らしたお話しするので、マーケティングなどの見解は入れずに進める。
メニューを比較すると、バラエティに富んでいるのはすき家だ。牛丼の味に特別な違いがないと仮定すると、「選べる楽しさ」を提供しているすき家が圧倒的に成功すると予想できる。また、安価な料金で、家族で食事を楽しめるという雰囲気の提供も成功法則に沿っている。
この点は、北陸を中心に店舗を展開している「8番ラーメン」にも共通点がある。
話を戻して、松屋と吉野家を比較した場合、松屋は並盛り380円で味噌汁付き、吉野家は並盛り380円に対して、味噌汁とサラダ130円の別料金。サラダがついているとは言え、オプションが本品の34%というのは高く感じる。また、コモサラセット(小盛りとサラダ)の400円はお得のようだが、男性客には量が少ない。
このようにメニューと価格について、お客が欲しい条件を外すと売上が下がるというのがこの記事でお話をしたい仮説だ。
行動経済学の分野で、心理会計という考え方がある。心理会計とは、損得をどう判断するかだと言える。
例えば、10万円のスーツを買った時、スーツに合う1万円のネクタイを買うことにためらいのない人でも、300円のコンビニサラダに対してドレッシングが150円だと高いと感じるような話だ。人はお金を出す対象によって、金額そのものではなく、損得に敏感になる。
この点から考えると、味噌汁とサラダが130円は心理的抵抗を促している可能性がある。ランチに関して、500円以下なら安い、1000円以上は高いという意識調査があることを考慮すると、吉野家の場合、並盛り+サラダと味噌汁で480円にするとお客の欲しい条件になるのではないかと予測する。
この点、富士そばのもりそば300円、カツ丼490円は絶妙の価格設定だと言えそうだ。富士そばは成功法則に沿っている。
熊本パルコはなぜ、閉店するのか?
熊本パルコが、閉店することになったようだ。「1986年の開業以来30年あまり。中心市街地の象徴的な存在としてにぎわったが、郊外型店舗やネット通販の台頭で、閉店に追い込まれた。」と新聞記事にある。
特に大きな影響は、近くの下通商店街に若者向けの商業ビル「COCOSA(ココサ)」が開業したことだと言われている。
ここで考えたいのは、競合の問題ではなく、売上が下がった段階で、「お客が欲しいもの」を提供できていないのではないかという危機感だ。競合の影響は否定しないが、17年5月~19年1月は22カ月連続で前年同月の売上高を下回った段階で、提供する商品をお客は欲しいものを欲しい条件で提供する方向に転換すれば、生き残れたのではないかと予測する。もちろん、テナント交渉など、簡単な戦略変更ができるとは思わないが、ここまで赤字を膨らませる前に撤退もできたはずだ。
売上が下がっている企業は、景気や競合を意識する前に、自社が「お客の欲しいものを欲しい条件」で提供できているかどうかを検証する必要がある。
100匹目の猿現象から考察する成功法則
宮崎県串間市の幸島に棲息するニホンザルの一頭がイモを洗って食べ始めた。すると同じ行動をする猿が増えて、100匹を超えたあたりから群全体に広がるというものだ。ここまでは不思議なことはない。
意識の伝播が行われるという仮説が導かれたのは、直接的な情報が届かない大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったからだ。
これが「ある行動、考えなどが、ある一定数を超えると、これが接触のない同類の仲間にも伝播する」という現象の実例とされている。この事例をもとに、「一人の思いが世界を変える」という話につながることが多い。
ここで注意したいのは、猿に思いがあるのかということだ。生物は環境に適応したものだけが生き残る。環境に適応するために、体型や行動に変化を及ぼすこともある。イモを洗うという行為が衛生面をよくすることで、環境に適応するのなら、集合的無意識を伝って行為が伝播されることもあるかもしれない。私は、環境に適応し、種の繁栄に効果的なことのみ伝播されるのではないかという仮説を持っている。従って、種の繁栄に関連しない、個人的な願望が伝播されることはないと考える。
実際、動物が奇妙な行動をすることは少なくない。千葉市動物公園で飼育されているオスのレッサーパンダ「風太くん」は立ち上げることで人気者だが、他に立ち上がるレッサーパンダはいない。
私たち人間にも、環境に適応するための偉大な力が備わっている。それが免疫だ。
免疫には、自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫とは、受容体を介して、侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞をいち早く感知し、それを排除する仕組みを持っている。生体の防御だ。ひとつの分子が、多種類の異物、病原体の分子に反応することができるが、特定の病原体に繰り返し感染しても、自然免疫能が増強することない。
ここで獲得免疫の登場となる。獲得免疫とは、感染した病原体を特異的に見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会った時に効果的に病原体を排除できる仕組みだ。
このように私たちは後発的に病原菌に対する免疫システムを構築することができるのだ。
また、世界的に見れば、O型の血液の人口が多い。O型の人は、遺伝子変異が起こった結果、赤血球の表面の糖鎖に、ウイルスをくっつけにくい性質がある。だから、感染症にかかりにくいと考えられている。これは遺伝的な性質で、世界中でO型の人口が一番多い理由は、免疫力が高いからだと推測できる。
この点から考えると、伝播する意識とは、個人的な願望ではなく、人類の繁栄のために有効な情報に限られると推察する。これが100匹目の猿と風太くんの違いだろう。そして、私が、潜在意識が個人的な成功に機能しない理由だ。
生物に共通する成功法則(仮説)
100匹目の猿現象から考察した成功法則の仮説は、
成功法則2:種の繁栄に貢献すれば成功する
ということだ。
生物の最大の目的は、種の繁栄だ。そのために最も大切な活動が優先される。
その活動とは、
・栄養を摂ること
・休息すること
・SEX
この仮説から、人口が減少する日本で成功すると予想できる業種は、
・健康産業
・婚活サービス
となる。
サプリメントの市場はさらに拡大すると予想する。他にも、飲食店であれば、無農薬の食材をリラックスできる店内で安価な価格で提供することができれば成功するだろう。高齢者向けには、たんぱく質やカルシウムの補給ができる食事の人気が出るだろう。他にも、高齢者むけのスポーツクラブも有望だ。
婚活サービスに関しては、子どもを産むことができる男女の組合せが有効だと予想する。地方の婚活サービスの需要が大きくなるだろうし、若い女性とシニア層のマッチングサービスは新しい市場を作ると予想する。
ユニクロとZOZOタウンの未来は?
ここでお話した成功法則に沿って考えれば、あらゆる業界で成功する企業が予想できる。
例えば、ユニクロを展開しているファーストリテイリング。体温調整ができる素材で、スタイルがよく見える商品を提供し続ける限り、成功する(業績を伸ばす)と予測する。健康管理と異性への意識を高める効果があるからだ。
一方で、ZOZOタウンは、経営者のプライペートを好ましく見たいと思う人が増えれば業績は上向くが、見たくない人が増えれば、業績は下降すると予測する。専門家は、商品やビジネスモデルについて評価するかもしれないが、この記事でお話した成功法則が正しければ、月旅行をすることはないだろう。
まとめ
この記事では、2つの成功法則の仮説をお話した。
成功法則1:人が欲しいものを欲しい条件で提供すれば成功する
成功法則2:種の繁栄に貢献すれば成功する
ぜひ、自社のビジネスはお客さんが欲しいものを欲しい条件で提供できているか、それが人類の繁栄に貢献しているかどうかを検証していただきたい。これができれば、未来を予測することが可能だと思う。